DOTSを実施する際に、私たちは6つのことを大切にしています。
先生方にも理解していただき、一緒により良い交流プログラムを作っていきましょう。
1.”成功”よりも”成長”を
私たちは「プログラムの成功」ではなく、「子どもたちの成長」を大切にしています。
新しい教育に取り組む際、「大人が準備したり想定しているとおりに順調にプログラムが進んでほしい」という思いを抱いてしまいがちです。他の先生方と協力して取り組んだり、見学者を迎えたりすると、「失敗できない」「良いプログラムを実施しないといけない」という責任感がプレッシャーになってしまうこともあるかと思います。
ただ、「想定通りに滞りなく進んだ」というだけの成功は、生徒の成長につながるのでしょうか?
不安を感じたり、うまくいえなくてもどかしかったり、自分の意見に自信がなかったり、伝わらなくて落ち込んだり…。
海外の生徒たちと交流する際、子供たちは喜びや達成感だけではない様々なことを感じ、経験していきます。そして、その一つ一つが子どもたちにとって大切な経験であると受け止めることが、「次は頑張りたい!」というモチベーションにつながっていくのです。
質問が互いに飛び交い合い、ワイワイと楽しく盛り上がるような交流の方が見栄えは良いかもしれません。しかしDOTSは、沈黙の時間、恥ずかしくてなかなか意見が言えない時間、通信が途絶えて交流が中断する時間、そんな「うまくいかない」や「もどかしい」という時間にこそ、学びに転換できるきっかけがあると考えています。
大人が想定した「成功」に固執することなく、その場その瞬間の子どもたちの気持ちや行動、子どもたちの成長をど真ん中に置くようにしています。
2.準備はほどほどに
先生が行う事前準備に関しては、”何もしない”くらい、極力最低限の準備にとどめることをお勧めしています。
大人があれやこれや入念に準備しすぎると、無意識に子どもたちを準備どおりに動かそうという操作が働くことがあります。また、彼ら自身の主体的な意見や行動が制限され、「大人が求めること」をこなす環境になりかねません。
日本の伝統文化や地域の特徴など、子どもたちが「事前に調べて準備したことを言う」環境になると、子どもたちには「正しいことを言わないといけない」「準備していないことは言えない」そんなふうにどんどん萎縮してしまいます。
DOTSは、子どもたち自身がその場の対話で感じたことや、彼らの自身の思いや考えを自由に発言できるような雰囲気づくりを大切にしています。「準備したことを言う」のではなく、「相手とのやりとりを楽しむ」そんな経験を子どもたちにしてほしいと思います。
3.どんな感情も受け止める
「うまく言えたかどうか」ではなく、子どもたちの感情や心の変化、成長に着目しています
大勢の前で自分の意見を発表する場面では、すぐに楽しめる子もいれば、苦手意識から緊張や不安を感じてしまう子もいるものです。私たちは、子どもたちにはそれぞれの特徴や個性、成長の段階があることを理解し、ネガティブな感情も次なる成長に向けたステップ、原動力になりうると捉えています。
そのためDOTSでは、子どもたちそれぞれの挑戦のプロセスの中で、沈黙、不安、恥ずかしさなど様々な感情あって当然、それで大丈夫なんだということを子どもたちに伝えるようにしています。
先生方も、それぞれの子どもの心の変化や小さな勇気に目を向けていただき、彼らが様々な感情を経験しながら、次なる一歩を踏み出そうとする姿勢を後押していきましょう。
4.頭ではなく、心でつながる
「国と国との文化交流」ではなく「人と人とのつながり」の場であり、国を超えた子どもたち同士の人間関係の構築が大切です。
文化交流の場合、「日本には四季がある」「ネパールにはエベレストがある」といった”情報の交換”になりがちで、「頭で考える」交流ともいえます。国際文化についての知識は深められても、「外国に友達ができた」という感動は生まれにくいのです。
DOTSを実施する中で、子供たちが一番笑顔になる瞬間があります。それは「海外の子どもたちが自分の名前を読んでくれた、名前を覚えていてくれた」「同じスポーツやアニメの話ができた」など、人としてのつながりがあったときです。
異国に住む人同士ではなく、友達としての会話が生まれると、「もっと話したい」「もっと聞きたい」「英語を使って直接やりとりしたい」というモチベーションが高まります。
私たちは、子どもたちが持っているそのような可能性を信じ、「外国に友達をつくりたい」「友達になったあの子は元気かな」そんな素朴な想いを抱いた交流を大切にしていきます。
5.次なる一歩へのきっかけ
DOTSは、みえる世界がひろがる”きっかけ”であり、子どもたちや先生方の次なる一歩につながることを目指しています。
交流内容を考える際、子どもたちに多くのことを学んでほしい気持ちから、ついつい内容を盛り込みすぎてしまうことがあります。英語を使う、日本のことを学ぶ、外国の文化を知る、自分の意見を発表する、相手に質問する、途上国の問題に気づく等々、あげればキリがありません。成熟した大人でも難しいことを、ついつい子どもには要求してしまいがちです。
海外の同世代と始めて話をするという経験は、世界とつながる第一歩、前向きな原体験です。
DOTSという「きっかけ」を通して、子供たちが自分の興味や関心に気づき、今後の学校生活や進路につなげていってくれることを願っています。
異文化理解やSDGs、日本文化、宗教など、その先にある学びは無限大です。先生方にとっても、ICTのさらなる活用や、社会や世界とつながる開かれた学校を実現していくことに踏み出せる機会になると思います。
6.子どもも先生も楽しむ
DOTSで最も大切なことは、「楽しむ」という気持ちです。人と対話すること、新たな世界とつながることの楽しさを体感してほしいと思います。
交流の中では「間違いや失敗はない」と何度も子どもたちに伝えています。正しいことを言わないといけない、というルールはありません。「授業」のように頭で学習する場とは異なり、自分の意見を伝えて、相手の意見を聞いて、コミュニケーションを通して人とつながることを楽しんでほしいと思います。
そのためには、大人が率先して楽しむ姿勢を見せることが大切です。正確な英文法を用いて英語を話せなくても、「伝える」楽しさを体現していきましょう。
最初は緊張するかもしれませんが、どんなときでもみんなで楽しむ気持ちが大切です。