Colorbathが2012年から取り組む「DOTS」は、日本とネパール・マラウイの3か国をつなぐオンライン交流プログラムです。未知なる国とのつながりを通して、生徒たちのみえる世界をひろげ、新たな一歩を踏み出すきっかけづくりをしています。

Colorbathは、カリキュラムづくりから当日の通訳、事後の振り返りまで、細やかな対話を大切にして授業実践者である先生をサポート。

また、交流の様子をホームページのレポートとして公開、出会いの数だけ異なる魅力が光るDOTSの様子を記録してきました。

一方で、2022年9月から開始した「DOTSセミナー」の企画のように、DOTSに携わる先生方のチャレンジを後押しすること、先生同士がつながることができるコミュニティづくりもおこなっています。

そこで、毎回一人の先生をお招きして、DOTSと出会ったきっかけ、ご自身のチャレンジ、考え方の変化などについて語っていただくインタビュー企画を始動しました!

今回お話を聞いたのは、周南市立富田中学校の水島先生
2021年から前任の先生から引き継ぎ、本格的にDOTSに取り組んでいます。
生徒さんを集める段階から、事前の準備、通訳やファシリテーション、ときにはじっと「見守る」こと。さまざまな挑戦をしてきた2年間を、一緒に振り返る時間となりました。

水島先生(周南市立富田中学校)
中学校英語教諭。課外活動の「DOTS」を取り入れており、生徒会を絡めての活動も行っていた。今年の富中でのDOTS開催のテーマは「冒険」。準備や、当日の進行も含めて生徒主体で行う取り組みをしている。第2回DOTSセミナーでは、中学校の先生ならではの視点で、授業づくりのアイデアや悩み、これまでの取り組みについて話していただいた。

DOTSとの出会い

水島先生が前任の先生からDOTSの活動を引き継いだのは、2020年12月のこと。

スタッフの吉川・椎木からColorbathの活動について話を聴き、「ワクワクした」水島先生。

さっそくDOTSに取り組むことになったものの、その活用の幅広さゆえに、最初のうちはどんなふうに活動していけばいいのか、どんな価値を見出していけばいいのか戸惑いもあったそう。

もともと富田中に勤務しており、現在は山口市立柚野木小学校で校長をしている勝間田先生のサポートもあり、だんだんと水島先生の熱意が周囲にも広がっていきました。

「他の学校や自治体の先生ともつながりができて、自分の世界が広がっていく。
こんな形でもいいよね、こうしたらいいかなと、一緒に話せる人がいるのは、すごくよいなと思います。
椎木さん(DOTS担当)と電話やzoomでお話しするときも、自分が考えたアイデアがどんどん膨らんでいくのが楽しいです。」

最初のころは、「SDGs」という言葉の広がりに着目し、「マラウイの人の困りごとを解決できたらいいね」と生徒さんたちと調べ学習に取り組んだ水島先生。

「ただ、そうしていると生徒も私も、「マラウイは支援が必要な国だ」というマインドセット、凹みを埋める考え方になっていってしまうんですよね。
助けたいという気持ちで、困っていることは何かを聴く質問をする。
でも相手から返ってくるのは、むしろマラウイの心の豊かさとか、生きていく楽しさ。
途中から、「困っていることを探す」質問よりも、「このスポーツが好き」「これに興味がある」などの”ふつうの”会話をしている時の方が盛り上がるんだと気づきました。」

「困りごとを聴く」から、「好きなことや身近な生活について聴く」にシフトした富田中DOTS。

マラウイの子どもたちからも興味津々な様子で質問が飛び、毎回イキイキとした表情で交流に取り組む生徒さんたちの姿が印象的でした。

今年のDOTSのテーマ「冒険」について

2周目となった富田中DOTSのテーマは、「冒険」

学期はじめに水島先生が各クラスにオンラインでプレゼンを行い、参加者を募ったそうです。その結果放課後に集まったのは、なんと30名ちかくの生徒さんたちでした。

画面の前に集まり、創意工夫をしながら「伝える」を積み重ねていく生徒さんたち。

「冒険」という言葉を選んだ理由をお聞きすると…

「理由は2つあります。
1つ目は、最近では先生が来る前に、生徒たちが机を準備したり画面をつけたり、主体的に取り組む姿がみられるようになってきたこと。そのときにちょうど、夏の「DOTSシンポジウム」に参加した先生から、「生徒たちの内側から溢れるエネルギーを大切にする教育」についての話を聴いて、魅力を感じました。
もう1つは、DOTSを持続可能なものにしていくためです。
生徒みずから企画・運営をしていくカタチをつくれたら、担当の先生がほかの学校に異動することになっても、生徒のニーズに合わせてDOTSを続けていけますよね。
部活の顧問が変わっても、伝統が受け継がれていくように。」

ただ、どこまで生徒に任せるべきか、葛藤するときも多いそう。

実りある時間にしたいからこそ、ボキャブラリーやコミュニケーションの方法など、サポートしたい部分もたくさん。

「私だけではなくて、富中の生徒たち、そしてマラウイの子どもたちにとっても、いい時間になっていたらいいなって思うんです。」

そんな水島先生の言葉に、これまでの積み重ねと、これからの挑戦が詰まっていると感じました。

生徒たちの「内側から出るエネルギー」を大切にしたい

「バランスをとるのは、なかなか難しいですよね」と話す水島先生ですが、先生の熱い想いが生徒さんに伝わっていると感じる場面が、DOTSに立ち会っていると数多くあります。

たとえば、このインタビューの前日に行われたDOTSでのこと。

ジェスチャーゲームの説明を買って出たある生徒さんは、自ら一生懸命に原稿を用意し、当日に臨んでいました。

また、学校で習った英語表現を積極的に使う姿も、水島先生にとって「そうそう、そういう時に使うんだよ!」とうれしくなる瞬間。

さらに、マラウイから歌の披露があったあと、吹奏楽部の部長さん自ら立ち上がり、「私たちも歌おうよ!」と声をかける場面もありました。

一つ一つのエピソードを、笑顔で嬉しそうに語ってくださる水島先生の姿が、とても印象的でした。

交流を続けていく中で気づく、「小さいけれど、大きな成長」

生徒さんたちの挑戦を「見守る」いまの水島先生だからこそ、気づき、伝えられる変化がたくさんありそう。Colorbathスタッフも一緒に、わくわくした気持ちを共有していきたいです。

「繋いでいく」ために

水島先生にとっての、これからのDOTSのテーマは「つなぐ」。

「今年参加した子がのこってくれて、また新しい子が入ってくる。
そうしてDOTSの「先輩」が生まれたら、もっと生徒自ら、こうしたらいいかな、ああしたらいいかな、というのが考えられるようになるかなと思っています。」

これからも、水島先生の挑戦は続いていきます。

オンライン交流プログラム「DOTS」としても、これからもその活動に伴走できればうれしいです。

▼Colorbathでは毎月、DOTSに関わる先生方と一緒に「DOTSセミナー〜世界とつながる教室のつくり方」というイベントを開催しています。

「生徒たちのみえる世界を少しでも広げるきっかけをつくりたい!」

そんな思いをもった先生方が全国から参加してくださっています。

普段はあまり交流する機会のない他校の先生と、現場で直面している悩みをできたり、他校の先生の取り組みに刺激をもらったり、そんな素敵なつながりが生まれる場となっています。

興味のある方は、ぜひご参加ください*